生産者のおはなし&素材の魅力

松江の伝統食品「あご野焼き」ができるまで
~地伝酒あご野焼き~

SPEAKER→青山蒲鉾店

2021年04月05日

「あご野焼き」は松江藩主も食した地域伝統食品です。地元産の原料にこだわり、昔ながら製法を守り続けているのが青山蒲鉾店。旬のトビウオ(あご)のみを使い、地元酒造の地伝酒を加えて、一つ一つ丁寧に炭火焼きしています。あご野焼きが焼かれる芳しい香り漂う工場を訪ね、青山蒲鉾店の青山泰崇さんにお話を伺いました。

青山蒲鉾店

江戸時代から変わらぬ製法
秘伝の地伝酒があごの旨みを引き立てる

あご野焼きは、山陰地方で「あご」と呼ばれるトビウオをすり身にし、焼いた地域の伝統食品です。氷のない時代、新鮮なあごを漁師がすり身にして竹に巻き付けて焼き、保存食としたのが始まりとされています。戦前は初夏になると、どの蒲鉾屋の軒先からもあごを焼く香ばしいにおいが漂い、その風景は松江の風物詩となっていました。野外で焼いていたことから「野焼き」と呼ばれるようになったといわれています。湿気の多い松江地方の気候は干物には適しておらず、そのため、保存食として野焼きが発達しました。さらに、地酒の地伝酒を加えることで、風味豊かなあご野焼きとなります。この伝統技術を家族で守り続けているのが青山蒲鉾店です。創業は享保12年(1727年)。5月下旬から7月中旬に島根県東部沿岸で水揚げされたあごのみを使い、炭も県内産を使用。化学調味料や保存料は一切使わず、「松江でずっと食べられてきた味」を今に継承しています。

青山蒲鉾店

地伝酒あご野焼き

地伝酒あご野焼き
原料と製法にこだわった「本場の本物」の味
一口でその違いを実感! 際立つあごの旨みと香り

江戸時代より弊社秘伝の料理酒「地伝酒」を使用した「地伝酒あご野焼き」は、芳醇な地伝酒があごの旨みを引き出します。昭和に入り、地伝酒の製造が止まった際には、粕取酒による調味法を開発し、あご野焼きをつくり続けてきました。その粕取酒を使った「あご野焼き」も製造・販売しており、地伝酒あご野焼きとはまた違った味わいを楽しんでいただいています。どちらも一口ほお張ると、野趣の奥にひそんだ旨みが一層際立ちます。その味は、地域で伝統的に培われた「本場」の製法で、地域特有の原料を用いてつくられた「本物」の味に与えられる地域食品ブランド「本場の本物」に認定されています。「本場の本物」の良さをお客様に知っていただきたいと、あご野焼きの製造工程の体験も行っています(現在は休止中)。炭火で焼きながら手作業で針をつき、焼き具合を確認。ゆっくりと時間をかけて手作りしている様子を間近で見ていただき、焼きたてを食べていただくことで「青山の味」を実感していただいています。

地伝酒あご野焼き

地元の皆様や島根県出身で現在は県外にお住まいの方々に、ご贈答用やお正月のおせち料理などでお付き合いいただいています。関東や関西の百貨店でも取り扱っていただいており、初めて食べられたお客様から「普段食べているちくわやかまぼことは全く違う」とたくさんの感想をいただきます。魚の旨みと香りを大事に、手間暇かけてじっくり焼き上げたあご野焼きは、一度食べていただければ、味の違いを感じていただけると思います。原材料も炭も、だんだんと県内産を確保することが難しくなってきました。「当たり前」が珍しくなった現代社会において、松江の古き良き「当たり前」を次の世代に残していきたい。その思いで、日々、赤く燃える炭の前に立っています。誠実に守り伝えてきた味を、自信を持ってお届けします。ぜひご家族でご賞味ください。

青山蒲鉾店

〒690-0874 島根県松江市中原町88

TEL 0852-21-2675/FAX 0852-21-8850

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